PEACE DAY財団では、活動を応援してくださっている特別会員の皆様からいただいた会員費の一部を、毎年平和活動に取り組む5つの団体にご寄付させていただいています。
今年の寄付先団体の皆様よりメッセージをいただきましたので、ご紹介いたします。
5団体目は、核兵器廃絶を目指し多角的に活動する東京の学生の団体『KNOW NUKES TOKYO』です。
世界には、1万2720発(*註)の核兵器が存在しています。核兵器の問題は、77年前に原爆が落とされた広島・長崎だけの問題ではありません。すべての人が、「13,000発の核兵器がある世界に生きる当事者」なのです。核兵器の問題を、被爆地の問題として矮小化させず、すべての人と考え、行動したい。そんな想いから、2021年5月、KNOW NUKES TOKYO(KNT)を設立しました。メンバーは、高校生~大学生まで11名(11月現在)です。全国各地・国内外に居住し、日頃はオンラインでつながっています。
現在、ロシアが核使用を示唆する中で、核兵器が使われる可能性はかつてないほど高まっています。1発でも核兵器が使用されれば、核戦争は避けられません。そうなれば、舞い上がった粉塵が地球上を覆うことで、平均気温が4度下がり、世界中で飢餓が起きる、といった研究も、数多く報告されています。
「核兵器」そのものを無くさなければ、核兵器が使われるリスクはゼロにはなりません。KNTは、私たちの「未来」を守るために、核兵器廃絶を様々な角度から推し進めています。
*註 2022年6月現在
https://www.recna.nagasaki-u.ac.jp/recna/nuclear1/nuclear_list_202206
核兵器、と聞くと、みなさんは何を想像しますか?
灰色、ごつごつ、きのこ雲、などでしょうか。それらはすべて、核兵器を「落とした側」から見える景色です。世界ではずっと、その視点から、核兵器についての議論がされてきました。
そんな中、2017年に核兵器禁止条約(核禁条約)ができました。核兵器の保有や開発、威嚇など、すべての行為を禁止した、初めての国際条約です。核兵器は人道的に許されない兵器、という認識が広がり、「落とされた側」、つまり人間の痛みや苦しみの視点で、核兵器のリスクが真剣に議論されるようになったのです。
私たちは、核禁条約を、核兵器廃絶のための重要なツールの1つと考え、推進しています。私たちの活動は、政治へのアプローチから、イベント企画まで、多岐に渡ります。
まず国会議員に直接会いに行って、核政策についての対話と行動を促す「議員面会」(https://www.know-nukes-tokyo.com/giinmeeting/)を始めました。6議員1事務所、外務省と面会。「議員と面会」と聞くと大それたことのように感じますが、誰にでもできます。面会依頼の手紙を書き、リマインドの電話をし、セッティングします。
お1人お1人、(同じ政党でも)意見にはグラデーションがあります。特に、条約に慎重な立場を示す議員とも、「なぜそう考えるのか?」「日本の条約参加の障壁は何か?」など丁寧に向き合っています。粘り強い対話の中からしか、共通価値を見出すことはできないと思っているからです。実際に、変化も起こっています。「条約賛同率」は、11%(19年)から、35%(22年 / 議員ウォッチ )まで増えました。
また面会の翌月、選挙公約に「締約国会議へのオブザーバー参加を目指す」と加えた議員もいます。議員は市民に問われるから、考え始めるのです。ただ、面会が実現したのは、全体の約4分の1です。「市民と議員が日常的に意見交換すること」こそが、民主主義の基本だと思っていますが、なかなかそれは実現されていません。私たちの活動は、足元から民主主義を形作ることなのです。
続いて、被爆者と若者の二人三脚をテーマにしたオンライン被爆証言会「ヒバクシャと会ってみよう」を定期的に開催しています。被爆者とメンバーが、共に語り手となって進める証言会は、被爆証言を過去の悲惨な出来事として終わらせず、今も続く影響に目を向けることで、今を生きる私たちがどう行動するのかを考える場となっています。
さらに、核兵器の情報を分かりやすく発信するインフォグラフィックスも作成しています。それらを活かして、中学校・高校などで出前授業も行っています。
今年の6月には、ウィーンで開催された核兵器禁止条約の加盟国が集う、「第1回締約国会議」にメンバー5名が渡航しました。https://www.know-nukes-tokyo.com/1msp-total-report/
現地では、被爆者と出会う証言会のコーディネートをしました。ヒバクシャと「カフェ」でお話するように出会い、被爆者と膝が触れ合う距離で交流してほしいと思ったからです。世界各国の約50名の参加者が囲みました。参加した家島さんは「この距離で対話をして、世界の人々の熱気を受け取ることができた」と喜んでくださり、参加者からも「一番双方向的で良かった」との感想がありました。
またKNTでは、国際NGOと協力し、「アドボカシー活動」に奔走しました。各国政府代表などに声をかけ、「被害者援助」や「環境回復」について、会議内での発言や自国のスピーチに積極的な文言を入れてほしいと要請をしました。エルサルバドル、マルタ、バングラデシュ、チリなどにアプローチ。「行動計画」には私たちの主張が多く盛り込まれました。
日本と世界を繋ぎながら、核兵器廃絶を目指して日々奮闘しています。(帰国後は全国40か所以上で報告講演実施)
今まで核兵器廃絶に関わってきた多くの若者は、取り組みを続けたいという気持ちがあっても、就職などで活動から離れざるを得ませんでした。それでは核軍縮は進まない。だからこそ私たちは、KNTの取り組みを通してアクションを持続可能なものにし、大学卒業後も、核兵器廃絶にコミットし続けることを目指しています。被爆者の平均年齢は84歳を超えました。私たちは彼らの声を聞ける最後の世代でもあります。厳しい現実に虚無感を感じることもありますが、私たちの社会は私たちの手で作っていくしかないのです。誰もが核兵器廃絶への一歩を踏み出せる。そんな空間を目指して、私たちはこれからも活動を続けていきます。