2022.10.28 Information

『“にんしん”にまつわる全ての悩みに寄り添いたい』 特定非営利活動法人ピッコラーレの取り組み

PEACE DAY財団では、活動を応援してくださっている特別会員の皆様からいただいた会員費の一部を、毎年平和活動に取り組む5つの団体にご寄付させていただいています。
今年の寄付先団体の皆様よりメッセージをいただきましたので、ご紹介いたします。
1団体目は、「にんしん」によって生まれるあらゆる悩みの解決と解消のために活動する『特定非営利活動法人ピッコラーレ』です。


「にんしん」にまつわる全ての「困った」、「どうしよう」に寄り添いたい

日本の子どもの虐待死の中で最も多いのは、0ヶ月0日、生まれたその日になくなってしまうケースということをご存じでしょうか。
そのほとんどは、誰にも相談できず、たった一人で、自宅のトイレや風呂場などでの孤独な出産をした母親によるものです。
「赤ちゃんを助ける気持ちよりも、誰にも知られたくない気持ちの方が強かった」と、その時の気持ちを語った女性がいました。
その言葉の背景には、どんな孤独や絶望、恐怖があったのでしょうか。
そもそも、彼女だけが加害者なのでしょうか。社会に彼女を支える仕組みがない、私たちが彼女を見ようとしていないことは、社会的なネグレクトではないのでしょうか。

 

また、国立成育医療研究センターが行った調査によると、2015年〜2016年に妊娠中から産後1年未満の妊産婦の死亡例、357例のうち、3分の1近くの102例が自殺だということがわかりました。
日本産婦人科医会が東京都の妊産婦の自殺について調査した結果、2005年から2014年までの10年間で63例あり、そのうち、妊婦の自殺は、妊娠2ヶ月での自殺割合が飛び抜けて高いという結果が出ています。つまり、妊娠に気がついたその時期の自殺が多いということです。
妊娠に気づいて自殺した妊婦については、事件として報道されることさえ、ありません。

 

● 妊産婦の死亡例

国立生育医療研究センター

 

● 自殺の時期(妊娠中)
日本産婦人科医会東京都23区の妊産婦の異常死の実態調査

 

0ヶ月0日の虐待死をなくすためには、妊娠中から妊婦を支えることが必要です。
妊娠の孤立を社会からなくすためには、「妊娠したかも…」といった妊娠確定の前の困りごとでも、相談できることが必要です。

 

私たちは、にんしんにまつわる全ての「困った」、「どうしよう」に寄り添い、相談者が必要とする適切な情報や利用可能な社会資源を伝え、関係機関を探し、つないでいきたいと、2015年12月、私たちは妊娠葛藤相談窓口「にんしんSOS東京」を開始しました。
以来7年近く、毎日、1日も休むことなく年中無休で相談を受け付けています。

 

2018年11月、公益性の高い事業をさらに幅広く展開していくことを目的に、「特定非営利活動法人ピッコラーレ」を設立しました。現在、妊娠葛藤相談支援窓口はピッコラーレが運営しています。そして今では、若年妊婦が産前産後宿泊で利用できる居場所の運営や、研修、政策提言活動など、活動の幅を広げています。

 

私たちは、彼女たちが本来持っていたはずの、社会や人とつながることのできる力をエンパワーメントし、自分と社会への信頼を持つことができるように、伴走したいと考えています。
そして、だれもが孤立することなく、自由に幸せに生きる権利を奪われることのない社会をめざして、活動をしています。

たくさんの相談事例から見えてきたこと

「生理がこない、妊娠したかもしれないけど、どうしていいかわからない」「妊娠のことを相手に知らせたら連絡が取れなくなった」「誰にも相談できない」「お金がなくて病院にいけない」など、私たちの相談窓口には、日々、いろいろな相談が寄せられます。
一度だけのやり取りでは終わらず、何度もやり取りをするケースもたくさんあります。
メールや電話だけでは解決が難しい時には、必要に応じて医療機関や保健所など、相談者に同行して支援を行うこともあります。

 

●「にんしんSOS東京」月別相談者数と対応回数の推移:

 

さまざまな相談者と向き合う中で、安心して過ごせる居所がなく、ネットカフェや友達の家などを転々としている10〜20代の若年妊婦に出会ってきました。そこで、彼らが安心して産前産後を過ごせる、「いつでもおいで」と言える居場所が必要だと痛感し、2020年、豊島区に「ぴさら」(フィンランド語で「しずく」の意味)と名付けた居場所を開設しました。


空き家を改修して開設された「ぴさら」。建物は2階建ての2LDK。Wi-Fiも完備しています。

 

ここには、児童相談所や子ども家庭支援センターなど公的機関からの問い合わせによりつながった利用者も少なくありません。このことは、居所のない妊婦が支援機関になんとか繋がったとしても、制度のはざまに置かれているがゆえに、安心して過ごすことができる居所を公的資源の中で得ることが難しい現状を表しています。

 

また、相談窓口開設当初から2019年12月までの間に「にんしんSOS東京」に寄せられた2919件の相談をもとに、相談傾向や背景を分析し、2021年、『妊娠葛藤白書』を発行しました。
その過程で、妊娠葛藤は個人の問題というより、性教育の不足、貧困、虐待、DVなど、性と生殖の健康と権利が守られていない社会の課題が背景にあることが浮かび上がってきました。

「誰にも頼れない」にんしんをなくしたい。そのために、社会をかえたい

ピッコラーレでは、「妊娠葛藤相談」「居場所づくり」「研修・啓発」「調査・政策提言」の4つのプロジェクトを基軸に活動しています。
この度、PEACE DAY財団よりご支援いただいた寄付金は、これらの活動費として大切に使用させていただきます。
また、2022年10月31日まで、これら活動のための資金調達と妊娠にまつわるさまざまな課題をより多くの人に知ってもらうことを目的にクラウドファンディングに挑戦しています。

 

「誰にも頼れない」妊娠をなくしたい。居場所とつながりの支援を一緒に(NPO法人ピッコラーレ 2022/09/12 公開) – クラウドファンディング READYFOR
※無事目標に達し、終了しました。

 

これからも、にんしんをきっかけに、誰もが孤立することなく、自由に幸せに生きていくことができる社会を目指していきます。