2021.11.22 Information

ヒューマン・ライツ・ウォッチとは:国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチからのメッセージ

一般財団法人PEACE DAYでは、毎年特別会員の皆様よりいただいたご寄付の一部を、平和に資する団体様にご寄付させていただいています。
今年の寄付先5団体様からご提供いただいたメッセージを、5回に分けてご紹介いたします。
最終回となる第5回目は、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」からのメッセージです。

ヒューマン・ライツ・ウォッチとは

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、世界中の人々の権利と尊厳、安全な生活を守るために1978年に設立された国際人権NGO(非政府組織)です。「調べる、知らせる、世界を変える」をモットーに、人権状況に関する客観的かつ徹底した調査を行い、それらを基にした戦略的なロビイング活動や政策提言を行なっています。これまでに世界90カ国以上で100本以上の報告書を発表し、メディアでの発信を通じて世界的な世論を作り出すことで、様々なアクターに働きかけ、人権問題の解決に貢献して参りました。

LGBT平等法制定に向けて

ヒューマン・ライツ・ウォッチ東京オフィスは2009年に設立され、日本国内をはじめとする多様な人権問題に取り組んでいます。そのひとつが、2020年10月に開始したLGBT平等法の制定に向けたキャンペーン「EqualityActJapan – 日本にもLGBT平等法を」です。全国100を超えるLGBT関連団体の連合体である「LGBT法連合会」、スポーツとLGBTに関する活動を展開する「アスリート・アライ」と協働し、国内外でLGBT平等法の制定を求める署名への賛同を呼びかけました。2021年3月には、106,250筆にものぼる署名を各党に提出しました。
この時期に日本でLGBT平等法の制定に向けた運動をすることは、特に二つの点で大きな意義を持ちました。一つ目に、性的指向や性自認によらず平等な社会をつくるためです。LGBTの人々は、社会に根強く残る偏見から、カミングアウトすることができなかったり、差別的な取り扱いを受けたりしています。世界では、80カ国以上で性的指向による雇用差別を禁止する法律など、LGBTに関する差別を禁止する法律が整備されています。一方、日本では性的マイノリティの人々の権利を保障する法律が存在しません。LGBT平等法を制定して性の多様性を受容するという政府からのメッセージを発信し、社会全体でLGBTに対する適切な理解を広げることが大切です。
二つ目に、日本が2021年に東京オリンピック・パラリンピックのホスト国として大会を主催したことです。オリンピック憲章では「性別、性的指向」による差別の禁止が明記されており、開催国にはLGBTに関する差別をなくすために制度を整える責任があります。オリンピック・パラリンピックでは、大会の開催が開催地にどれだけポジティブな効果をもたらしたかという「レガシー」作りが重視されています。レガシーには文化的・社会的な影響も含まれ、「多様性と調和」をテーマに掲げる東京大会のタイミングにLGBT平等法を制定することが重要です。
EqualityActJapanキャンペーンを受けて、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟(以下、LGBT議連)」がLGBTに対する理解を促す「LGBT理解増進法案」を作成しました。その後、法案は自民党内で審査されましたが、一部自民党議員が反対し、2021年通常国会での提出は見送られました。反対意見の多くは、法案の「性的志向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識」という文言に対して、行き過ぎた差別禁止運動に繋がるという異論によるものでした。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今国会の法案提出見送りと、一部議員による性的マイノリティへの差別発言が見受けられるなどの状況を遺憾に思っています。今後も差別のない社会を実現すべく、LGBTの権利保護に向けた活動を続けていきます。

多様な性的志向と性自認を認める社会へ

2021年には、新たにトランスジェンダーの人々の権利を対象として性同一性障害者特例法改正に向けた報告書を発表しました。性同一性障害者特例法は、トランスジェンダーを精神疾患とする考え方に基づき、戸籍記載の性別変更手続きに5つの要件を課しています。その一つに、断種手術の義務付けがあります。これらの規定は、断種手術を望まない多くのトランスジェンダーの性別変更を妨げるとして、当事者や人権団体、専門家から強い批判を受けています。世界各地では断種要件を撤廃する法律が起草され、スウェーデンやオランダなどでは、過去に行われたトランスジェンダーへの強制断種を権利侵害と認めた賠償が行われています。日本でも、トランスジェンダーの人々が自身のアイデンティティをもとに法律上の性別を変更できるよう、法改正を進めていくべきです。
本報告書を作成するにあたり、トランスジェンダー当事者への聞き取りや専門家へのインタビューを行い、綿密な調査を実施しました。そして、国会議員や各省庁といった政策立案者に向けた提言を行なっています。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これらの経験を活かして、全ての人の権利と尊厳を守るため、今後もアドボカシーに励んでまいります。

 

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