2021.12.31 Monthly21

PEACE DAY monthly 21 #3 開催レポート

一般財団法人PEACE DAYは、「9月21日=国際平和デー(通称:ピースデー)」の認知を高め、100万人の市民と、企業・団体の平和実現に向けた新しい取り組み「PEACE DAY monthly 21」をスタートします。
毎月21日に、様々な社会課題解決に取り組むゲストと参加者の皆さんとのオンラインでの対話を通じて学びを深め、平和な世界を実現していく仕組み作りについて、私たちができることを考えます。第3回目となる12月21日、[PEACE DAY monthly #3]の開催をしました。

 

「これからの日本と世界のLGBTを語ろう」今回は、日本からは日本を代表するLGBT活動家の杉山文野さんを、世界からは来年2月に日本で初公開予定の映画「チェチェンへようこそ-ゲイの粛清-」の監督のデイヴィッド・フランスさんをゲストにお迎えし、一般財団法人PEACE DAYの理事であり、国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表である土井香苗さんをモデレーターに、日本と世界の現状を伺いながら、LGBTインクルージョンに向けて、私たちが日本のためにできること、日本の外のためにできることを考えました。

 

まず、土井さんから世界のLGBTへの国ごとの理解について世界地図を使いながらご説明をいただきました。

 

 

そこからお話は、チェチェン共和国の属するロシア連邦では、政治批判がいかに困難であるか、人権危機の深刻な状況をお伝えいただきました。
チェチェンの現状を知ったのち、デイヴィッド・フランス監督が撮影した「チェチェンへようこそーゲイの粛清―」の予告動画を鑑賞しました。

 

次に、杉山さんからの日本のLGBTQの現状のお話を伺いました。
杉山さん自身がトランスジェンダーであることから、日本で性同一性障害特例として定められている条件をクリアすることの難しさや、それによってご自身のパートナーと婚姻関係を結ぶことができていないこと、そこで起きる問題について具体的な話を交えながらお話いただきました。

 

【国で性同一性障害特例として認められてないことで起きる問題の例】
・役所での手続きは女性として行うこと
・パートナーの入院時、家族として手続きが行えないこと

 

 

その後、数字で見る日本のLGBTQをご紹介いただき、近年、日本での理解は進んでいるように見えて、まだまだ根強い偏見があることを知りました。

 

【数字で見るLGBTQ】
・東京レインボープライド2019来場者数 200,000人
・LGBTの認知度 8割
・職場でのカミングアウト 1割
・LGBTQ当事者がいじめにあった割合 6割
・LGBTQ施策のある企業 10.9%
・パートナーシップ制度導入自治体 141自治体(2015年の渋谷区・世田谷区の導入が始まり)
・OECD 35カ国中のLGBTQ法整備ランキング 34位

 

日本がLGBT Qへの理解へ遅れをとっている理由として3つの要因が挙げられました。
●特例法の要件緩和が進まない
●同性婚ができない
●差別禁止法がない
こういった国の整備が進まないと、偏見を生みやすい環境はなくならないと杉山さん、土井さんはおっしゃいます。

 

杉山さんからのお話の後は毎日新聞元モスクワ派遣員の真野さんに飛び入り参加していただき、コロナ禍で海外へ逃避できなくなったことで、チェチェンのみならず、ロシアでもLGBTを巡って、状況が悪化している事実をお伝えいただきました。

 

ここで、時差のため遅れていたデイヴィッド監督が登場。
デイヴィッド監督のいるNYはAM5:00にも関わらず、ご参加いただきました。
参加者からの質問も増え、世界のLGBTQについて深める時間となりました。
―――
【映画制作過程で、監督自身が危ない目に遭われた経験は?】
制作自体はカメラを徹底的に隠して行っていたので、危険な目に会うことはなかった。
上映が始まったのはコロナのパンデミックが始まる前だった。上映が始まってからは映画界全体に脅迫があったり、ドイツの映画祭に行った際には暗殺者に注意する必要があったり、危険を感じる時があった。しかし、コロナのパンデミックによるロックダウンによって、身を守ることができた。

【映画ではLGBが中心につくられていたが、T(トランスジェンダー)の現状はどうなのか?】
Tも同じく決して安全な状況ではない。LGBT誰も変わらず、とても危険な状況の中にいる。

【性転換など、医療関係も迫害を受けているのか?】
ちゃんと現状をお伝えしたいが、お伝えできないほど情報が入ってこない。そもそも当事者が声を上げることがとても危機的な状況なので、当事者以外の人の情報は入ってこない。それほどに緊迫した状況にある。

【国際社会ができることとは?】
国民は政治へ声を上げられないのが現状である。そのため、他の国から政府へ進言することが少しずつでも緩和へ繋がっていくのでないか。それがとても重要である。
―――

 

当事者や身近で見ている人たちだからこそ知り得る現状は、とても緊迫したものでした。
現状を正確に知っていくことが、LGBTインクルージョンへの一歩になるのではないでしょうか?
デイヴィッド・フランス監督の「チェチェンへようこそーゲイの粛清―」は2022年2月に日本で公開されます。
次の開催もお楽しみに!