2022.07.06 Monthly21

「PEACE DAY monthly 21 #9」開催レポート

毎月21日に開催している「PEACE DAY monthly21」。
9回目は「世界難民の日」をテーマにトークセッションを開催しました。
 
6月20日は、世界難民の日。アフガニスタン難民となった映像作家の逃避行を撮影したセルフドキュメンタリー映画『ミッドナイト・トラベラー』を上映後、認定NPO 法⼈ REALs理事⻑・JCCP M 株式会社取締役 瀬谷ルミ子さん、NPO法人WELgee 事業統括・NPO法人アルペなんみんセンター理事 山本菜奈さん、認定NPO法人Living in Peace 代表理事・一般社団法人Welcome Japan 理事・株式会社LIFULL FRIENDLY DOOR 事業責任者 龔軼群さんをゲストにお迎えし、それぞれが活動する団体の内容をご紹介いただきながら難民の方への想いについてお話しいただきました。
 
まず初めに、タリバンから殺害予告を受けた映像作家とその家族の逃避行を撮影したセルフドキュメンタリー映画『ミッドナイト・トラベラー』を90分間上映しました。
 

 
ミッドナイト・トラベラー
2015年、映画作家のハッサン・ファジリは自身が製作したドキュメンタリー映画の内容に憤慨したタリバンから死刑宣告を受けます。家族を守るため、妻と子供2人とアフガニスタンからヨーロッパまで5600kmの旅に出発することをハッサン・ファジリは決意します。その旅の様子を自身の3台のスマートフォンで記録したドキュメンタリー映画です。
 
『生きる』ということ
映画では、難民保護や支援を受けられない国や、暴力や争いに巻き込まれるシーンが数多くありました。子供たちが苦しみ、涙を流すシーンも。それでも、ハッサン家は強く、逞しく、笑顔を絶やさずにカメラの中に写っていました。苦しみの中でも楽しみを見つけだし、友達と遊んで走り回り、ダンスを踊り、歌を歌っていました。明日のことさえも分からない、不確かな運命に向かうということは言葉で言い表せるような不安ではないと感じました。でも決して未来を諦めず、5600km先の目的地を目指し生き続けるその姿に勇気をもらいました。
 
映画上映終了後はNPO 法⼈ REALs理事⻑・JCCP M 株式会社取締役 瀬谷ルミ子さんのお話しを伺いました。
 
『REALs』
争いを未然に防ぎ人と人が共存できる社会をつくるNPO法人
・Vision:実現したい社会
「紛争・テロ・社会的な暴力」を防ぎ、乗り越え、共存できる社会
・Mission:私たちの使命
争いの当事者とともに、問題解決へのリアルな選択肢をつくり、実行する
 

 
昨年度の争いによる死者数は分かっているだけでも148,705人。争いによって避難している人は8,930人。その総数は世界人口17位のドイツを上回り、世界の80人に1人が難民という現状です。
争い予防をするにあたって重要なことは、まず人々が衣食住をふくめた最低限の人間らしい生活ができるようになること。そうしなくては、1年後、3年後、5年後の平和や争いを防ぐことを心の底から信じて考えることはできないと瀬谷さんは仰っていました。そのために必要な中・長期的な継続した自立支援をREALsは行っています。
 
映画監督、女優、ジャーナリスト、音楽家、女性アスリートなど当たり前の職業の方々が殺害・迫害・拘束の被害に遭っている現状と退避・保護支援の成果についてお伝えいただきました。
 
そしてREALsの活動の特徴についてご紹介していただきました。その国々の特徴や問題に合わせて、人々に寄り添いながら問題解決へと繋げていき、自身がその国のロールモデルとなることで次の世代へ活動の連鎖を生んでいくことが彼らにとって誇りであると仰っていました。
 
瀬谷さんの後はNPO法人WELgee 事業統括・NPO法人アルペなんみんセンター理事 山本菜奈さんにお話しいただきました。
 
『WELgee』
日本に逃れた難民とともに未来を築く団体。
難民認定を待つだけではなく、経験、専門性、パッションを生かして未来を築く道筋を多様なセクターとの協働を通じて目指します。
 
日本の難民認定申請含め処理数13,526人に対し、難民認定数はたった74人。
日本の難民認定率はG7最低の1%未満だそうです。
 

 
「難民」となる前に1人1人それぞれの生き様と人生とキャリアがあり、「難民」というのもその人が持つ背景の1つであると山本さんは仰っていました。そして、その多様な持ち味が生かされないのは勿体無い、「可哀想」という言葉が似合わないと強くお話ししてくれました。
 
日本で難民申請をした場合、平均で4年4ヶ月待つことになります。来日した難民申請者にとって唯一の希望の道は、「滞在する許可を更新し続け認定を待つ」のみ。その中で『WELgee』は「難民」としてではなく、「人材」としてキャリアを築く仕組み作りを行っています。
とはいえ、人材といっても迫害や紛争から逃れてきた人たちなので、すぐに自分のキャリアに向けて頑張る!という精神状態ではない人が多くいます。そこで、日本の企業シーンで活躍できるまで1人1人に寄り添い、中・長期的に伴走しキャリアの構築を目指します。
 
難民になった時点で生き延びることしか望めない人生は違うのではないか。これからの人生を奪われた人たちがもう一度自分らしく活躍し、且つ日本社会の力になれる。難民の方は私たちにとって身近な存在であり、関わることも会うことも友達になることも、一緒に仕事をすることだってできます。避難ができて終わりではなく、そこから続く人生を再建するために私たちは徹底的に伴走する。と最後に山本さんからお言葉をいただきました。
 
『Living in Peace』
マイクロファイナンス、こども、難民の3つのプロジェクトを柱に活動し、現在は150名以上のメンバーが所属しています。
 
マイクロファイナンスプロジェクト
2009年に日本で初めてのマイクロファイナンス機関を支援するファンドを立ち上げ。
最近では途上国の農家を支援するフェアトレード事業を開始。
こどもプロジェクト
児童養護施設の建て替えや奨学金、キャリア教育など多岐にわたる支援を実施。
日本国内のこどもたちの機会の不平等を解決するため2009年より活動。
難民プロジェクト
日本に暮らす移民・難民の方々が自立して生活していくための支援を実施。
2018年に事業を開始し、就職活動の伴走、日本語学習支援、大学との共同研究等も行う。
 

 
キャリア形成・就労をサポートすることと、受け入れる社会への働きかけを促し、難民の方々が自立して暮らせる社会をつくることを目指しています。
 
就労支援×UNHCR
○対象者:日本でキャリアを築いていきたい難民ルーツの学生(大学生、大学院生)、新卒中心、一部中途
○支援の流れ:1年〜4年程度で伴走支援
日本語学習支援や、インターンなど就職活動を支えると共に相談や心のケアを行っています。
 
LIP-Learning
○対象者:日本で自立・キャリア形成を望み、日本語学習に意欲的な難民背景のある人々
○支援方法:オンライン日本語スクールに通うための奨学金を提供しています。
(難民背景のある人々に対して初めての取り組み)
 
最後に・・・
「難民」というと自分には関係のない、少し遠くで起きている問題に感じてしまいがちですが、私たちの暮らす日本にも難民の方々は沢山います。「難民」と呼ばれている方々も私たちと変わりのない1人の「人間」であり、それぞれの未来を持っています。1人でも多くの人が優しい気持ちを持って勇気のある行動をすること。その小さな力が難民の方にとって大きな力になると感じました。
 
イベントの様子は、アーカイブでご覧いただけます。
今回紹介した以外にも、学びにつながるお話しが沢山交わされています。
是非、ご覧ください。
 
▼PEACE DAYmonthly21#9 アーカイブ
https://peaceday.jp/monthly9-archive/
 
次の開催もぜひお楽しみに!