毎月21日に開催している「PEACE DAY monthly 21」。
29回目のテーマは、「アースデイ東京2024コラボレーション」。
今回は、アースデイ東京×『WIRED』日本版共催によるコラボレーション企画を開催しました。世界的にも注目を集める「リジェネラティブ」というムーブメントを多角的に捉え、たくさんのゲストを招き、参加者のみなさんと共に自分ごと化していく一日となりました。
「4月22日はアースデイ(地球の日) 地球のことを考え、感じ、行動する日」
アースデイ(地球の日)は、1970年に始まった、世界最大のグローバルな環境行動の日です。世界200カ国以上、日本国内でも各地で様々なアクションがおこなわれてきました。アースデイ東京の立ち上げ人であり、様々な環境活動に取り組む谷崎テトラさんに、アースデイの成り立ちや日本での取り組み、そして、『WIRED』との関係性などをお話いただきました。
そして、アースデイと日々連携して活動しているPEACE DAY(9/21 国際平和デー)とTHE WELL-BEING WEEK(3/20 国際幸福デー) の代表が登壇し、共に活動する意味や3団体だけでなく参加者の皆さんとも一緒に手を繋いで活動していきたいという熱い気持ちが伝わるトークセッションとなりました。
河野 竜二さん(アースデイ東京事務局長)
1981年生まれ。湘南在住。教育業界で10年間勤務の後、独立。湘南エリアに特化した職業紹介「湘南WorK.」や、鎌倉の農家を“援農“でサポートするコミュニティ「ニュー農マル」、一年中泊まれる海の家「koyurugi stay」を手がける。また、趣味のサーフィンを通じて環境問題に関心を持ち、日本最大級の環境イベント“アースデイ東京“に参加し、2018年より現在まで事務局長を務める。2020年からは環境省「つなげよう、支えよう、森里川海プロジェクト」のプロデューサーとして参画。持続可能な社会の実現に向けて奔走している。
谷崎 テトラさん(放送作家/メディアプロデューサー)
1964年、静岡生まれ。新しい価値観(パラダイムシフト)、 持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&キュレーターとして活動中。環境・平和・アート・教育をテーマにしたメディア、TV、ラジオ、WEB番組、出版、イベントの企画構成・プロデュースを行う。持続可能な社会システム、世界のエコビレッジやコミュニテイラーニングに関して深い知見を持ち、国連 地球サミット(RIO+20)など 国際会議のNGO参加・社会提言や環境省「つなげよう森里川海」映像制作など、社会提言のメディア発信、企業・市民セクターとの連携などを数多くてがける。
井上 高志さん(LIFULL代表取締役会長/特定非営利活動法人PEACE DAY代表理事)
神奈川県横浜市出身。新卒入社した株式会社リクルートコスモス(現、株式会社コスモスイニシア)勤務時代に「不動産業界の仕組みを変えたい」との強い想いを抱き、1997年独立して株式会社ネクスト(現LIFULL)を設立。インターネットを活用した不動産情報インフラの構築を目指して、不動産・住宅情報サイト「HOME’S(現:LIFULL HOME’S)」を立ち上げ、日本最大級のサイトに育て上げる。現在は、国内外併せて約40社のグループ会社、世界で60以上の国にサービス展開している。個人としての究極の目標は「世界平和」で、LIFULLの事業の他、個人でもベナン共和国の産業支援プロジェクトを展開し、公益財団法人Well-being for Planet Earth 評議員、一般社団法人新経済連盟 理事、一般社団法人ナスコンバレー協議会 代表理事などを務める。
前野 隆司さん(THE WELL-BEING WEEK 実幸委員長)
1984年東京工業大学卒業、1986年同大学修士課程修了。キヤノン株式会社、カリフォルニア大学バークレー校訪問研究員、ハーバード大学訪問教授等を経て現在慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長兼務。博士(工学)。著書に、『幸せな職場の経営学』(2019年)、『幸福学×経営学』(2018年)、『幸せのメカニズム』(2014年)、『脳はなぜ「心」を作ったのか』(2004年)など多数。日本機械学会賞(論文)(1999年)、日本ロボット学会論文賞(2003年)、日本バーチャルリアリティー学会論文賞(2007年)などを受賞。専門は、システムデザイン・マネジメント学、幸福学、イノベーション教育など。
後半は、『WIRED』日本版エディターの岡田弘太郎さんより「リジェネラティブ・カンパニーとは何か?」についてお話いただきました。
リジェナラティブの対比として、よく使われるのがサステナブルという言葉。サステナブルが現状維持やマイナスを無くしていくというニュアンスが強いことに対して、リジェナラティブは自然本来が持つ生成力を活かして、それをどう回復していけるかという概念のことを指すと岡田さんは仰っていました。
リジェネラティブ・カンパニーとは、農業を通して環境破壊するのではなく自然を再生していく、会社や団体の未来の在り方について考えるなどといった概念を指し、3原則の柱が設定されているようです。
(1)代弁者なきステークホルダーにポジティブな影響を与える。
(2)多元的な資本を生み出し、その価値を測定する。
(3)複雑なシステムに介入し、修復する。
リジェネラティブ・カンパニーについてお話を伺った後は、3名のゲストをお呼びし「衣食住から考える、リジェネラティブな未来に向けたアクション」をテーマにトークセッションが行われました。
岡田 弘太郎さん(『WIRED』日本版エディター)
『WIRED』日本版エディターとして、雑誌『WIRED』日本版VOL.49「THE REGENERATIVE COMPANY 未来をつくる会社」号の責任編集を務める。そのほか、一般社団法人デサイロ代表理事。クリエイティブ集団「PARTY」パートナー。1994年東京生まれ。慶應義塾大学にてサービスデザインを専攻。「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」選出。
鎌田 安里紗さん(一般社団法人unisteps共同代表理事)
雑誌『WIRED』日本版VOL.49「THE REGENERATIVE COMPANY(リジェネラティブ・カンパニー)」号では特集アドバイザーを務められ、衣服の生産から廃棄の過程で自然環境や社会への影響に目を向けることを促す企画を幅広く企画されています。企業や生活者など様々なステークホルダーと交わり、よりよいアパレル循環を考えていきたいと話す鎌田さん。特に、消費者に向けた種から綿を育てて服をつくるプロジェクト「服のたね」を企画では、一年半という長い月日をかけて、ゼロから服を作り、どう生産していけばいいのかなどといった企画のお話は大変興味深かったです。
露木 しいなさん(環境活動家をなくしたい環境活動家)
インドネシアの「Green School Bali」で高校3年間を過ごし、学ぶだけではなく行動しなければ環境問題は何も変わらないことを知り、2019年9月に慶應義塾大学に入学したものの現在は休学し、全国の小中高学校220校、約32000人の方に向けて環境問題や社会課題について講演をしています。
現在は妹の肌荒れをきっかけにコスメ作りを始め、試行錯誤されているそうです。また、既に極上のオーガニック口紅を発売されています。
阿座上 陽平さん(ゼブラアンドカンパニー共同創業者/代表取締役)
雑誌『WIRED』日本版VOL.49「THE REGENERATIVE COMPANY(リジェネラティブ・カンパニー)」号では、企業のリジェネラティブシフトを促すためのフレームワークを『WIRED』日本版編集部と共同制作されました。社会課題の解決と自立的経営の両立を目指す「ゼブラ」の考えに共鳴し、田淵・陶山と共に2021年にゼブラアンドカンパニーを創業され、現在は経産省と伴奏されていたり、北海道で放牧実験などもされているようです。
鎌田さんは、アウトドアウェアメーカー「Patagonia」と高度な再生技術を持つ「株式会社JEPLAN」を例にお話いただきました。
「Patagonia」は、コットンの農法を変えていくという実験を農家さんと連携して進められているとのこと。ナチュラルと認識されている商品にもたくさん農薬が使用されている現状。オーガニックコットンが作られているのはコットンの中でもわずか1パーセント以下しかないそうです。リジェナラティブ農法では、「耕さない」「色々なものを一緒に植えて土を覆う」などをすることでコットンを栽培することへの環境負荷を減らし、むしろポジティブな影響を作っていくことができるそうです。これを農家さんに任せきりにするのではなく、Patagoniaは共にチャレンジをしている先進的な企業だと仰っていました。
https://www.patagonia.jp/home/
また、あらゆるものを循環させる「株式会社JEPLAN」は、高度な再生技術を持っている企業です。特に衣服の再生技術は、世界的にも高度だと言います。衣服から衣服へのリサイクル率が1%以下という状況で、JEPLANでは、品質を落とさずに衣服を再生することが可能だと言います。「環境負荷が高いものが安い」という市場がまだまだ続いていて、資本主義の中で値段が高い商品を選ぶ生産者は少なく、とても厳しい現状があります。企業・行政が一緒になって仕組みを変えていく努力が必要だと熱く話していただきました。
https://www.jeplan.co.jp/
阿座上さんは、豆腐メーカーの「相模屋食料株式会社」を紹介。現在10社以上の同業のM&Aを行っている企業で、大手スーパーなどに卸す豆腐は価格競争が起こり品質の維持が難しいという状況の中、相模屋食料では地場産のお豆腐を復活させ地域で大切に守っていくという方法をとっているとのこと。地域の豆腐を大切にしていくことで、文化を繋ぎ再生させていく。リジェナラティブは環境や自然だけではなく、文化も循環することの大切さをお話いただきました。
https://sagamiya-kk.co.jp/
露木さんは、ご自身のブランド「SHIINA organic」についてお話しいただきました。まだまだ「リジェナラティブ」ができていない現状ではあるが、消費者には見えないところで少しずつ行動をしていると仰っていました。例えば、工場から完成した商品が届く際に必ず付いてくるプラスチックの梱包材。これを捨てるのではなく、再利用してもらえるように工場へ返送しているとのこと。また、工場の電気も再生エネルギーに変えてほしいと交渉をするなど、小さなことから業界の当たり前を当たり前じゃないものに変えていきたいとお話されました。
https://www.instagram.com/shiina.organic/
社会課題の啓蒙と行動を呼びかけてきたアースデイ東京と未来への実装を掲げる『WIRED』日本版が手を組むことにより、草の根で活動してきたさまざまなコミュニティや市民活動家、ビジネスから地球再生に取り組むスタートアップ、研究者などのセクターやフィールドを超えたさまざまな人々が一同に集った今回のイベント。「地球環境」という壮大なテーマがより身近なものに変換できた時間となったのではないでしょうか。