ガザ地区の女性フォトグラファー・ファトマさんの人生を描いたドキュメンタリー映画『手に魂を込め、歩いてみれば』が、ピースボートクルーズVoyage121の船内で上映されました。武力ではなく、表現によって平和を伝える本作は、参加者に深い感動と問いを投げかけました。
ピースボートクルーズVoyage121に乗船しているPEACE DAY MESSENGERの川口さんから
今回の船内上映に参加したレポートが届きました。
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『旅とチョコレート』
「最近は動物の餌を食べている。今の望みは、鶏肉とチョコを食べることだ。」
そう語る主人公は、同い年だった。
本作は紛争が続く廃墟のガザで撮影を続けるフォトジャーナリストと、彼女を見守るイラン人監督とのビデオ通話を収めたものだ。彼女は絶望とも思える状況で、笑顔で明るい未来を語る。
「世界の色んな所を旅して、写真をもっと勉強したい。」
しかし、悲惨な現実を前に流石の彼女からも笑顔が消えていく。時系列に収められたビデオ通話の連続から伝わる非情な現場。作中には本映画のカンヌ映画祭上映が決まった瞬間も収められている。しかし、その後に襲う悲劇にはあまりにも救いがない。
世界を旅する豪華客船「ピースボート」でこの映画を鑑賞している自分。彼女と対比せざるにはいられなかった。絶望に打ちひしがれて部屋に帰ると、同じ部屋の友達が悪気なく僕にこう尋ねる。
「チョコレートいる?」
彼女の生きた軌跡は、映画を通して次なる平和へのメッセージとして活きている。ピースボートでこの映画を上映するかどうか、最後まで検討が重ねられたという。ある種淡々と続くビデオ通話の連続は、観客を退屈させ得るのではないかと心配された。しかし、私はその真摯な映像からしか伝わらない悲惨な現実があると考える。特に20代で主人公と同世代の人らは、自らとの対比からきっとガザや平和について関心を持つきっかけとなることだろう。
ユダヤ人迫害の歴史やイギリスの外交など複雑な構造によって引き起こされたガザの紛争。その構造と悲惨な現実を前に、自分達ができることは何だろうか。まずは精一杯生きること。想像を絶する苦難の中、力強く生きる彼女を前に、平和なこの世を懸命に生きないのは失礼ですらあると思った。悲惨な現状に対して直接的に貢献することは難しいかもしれない。でもまずはこの映画を観て現状を知り、周りと語り合うことから始めてもいいだろう。それがガザや次なる「ガザ」を救う、微力だが無力ではない一歩になるはずだ。
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▶ 映画公式サイト:『手に魂を込め、歩いてみれば』
https://unitedpeople.jp/put/