2021.03.31 Information

厄介者の「竹」をソーシャルグッドに。「西村修さん」の挑戦。

キツネやミミズクのかわいらしい折り紙と、竹がデザインされたおしゃれなノート。これらの紙商品は、全て日本の「竹」から作られており、竹が引き起こしている社会的課題解決の取り組みとして高く評価されています。

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需要低下により増える「放置竹林」が引き起こす問題

竹は成長が非常に早く、しなやかで丈夫なその性質から、古くから生活用品や工芸品に使用され日本人の生活と文化に密着していました。しかし、プラスチックなどの代替品の出現や生活様式の変化などにより需要が大きく減り、農家の高齢化や担い手の減少などの理由から管理されなくなった「放置竹林」が全国に広がり問題になっています。

放置竹林が起こす問題は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、生態系への影響です。適切な手入れをされなくなった竹林は、里山や森林へと広がっていき、クヌギやコナラなど竹よりも背が低い多くの植物の日光をさえぎり枯らしてしまいます。また、竹よりもはるかに背の高いヒノキなどの樹木が、竹の優れた吸水力が原因で十分な水分が得られず枯れたという事例も報告されています。雑木林が枯れて竹林に変わることで、環境の変化により鳥や昆虫の種数が減少し、「生物多様性の低下」を招きます。

2つ目は、土壌や水への影響です。森林の土は、雨水をゆっくりと吸い込み、地下水として蓄え、少しずつ川に流れていきます。大雨でもすぐに川が溢れず、日照りが続いても川の水がすぐに無くならないのはこのためです。このような山から川に流れる水の量や時期に関わる機能のことを、「水源涵養機能(すいげんかんようきのう)」と呼び、土壌や水を豊かにする作用もあります。竹の地下茎は地中30センチメートル程度に集中しているため雨水が地中深くまで浸透しなくなり、水源涵養機能の低下を招きます。
見た目に清々しい竹林ですが、私たちの暮らしに関わるさまざまな問題の原因となっているのです。

“ソーシャルアニキ”「西村修さん」の挑戦。

竹林の多い鹿児島県薩摩川内市に工場を持つ、中越パルプ工業株式会社の営業企画部長、“ソーシャルアニキ”こと「西村修さん」は、国産竹を原料にした自社の紙に着目し、その取り組みに社会的価値を見出し「竹紙」と名付け、たった一人で企業ブランディングを推進しながら新たなソーシャルグッド(環境や地域コミュニティに良いインパクトを与えるサービスや取り組み)が生まれるよう1998年から活動を続けています。
同社で竹を紙にしたきっかけは、竹林整備で出る竹の処分に困ったタケノコ農家からの、“竹を製紙原料にできないか”という打診でした。伐採や運搬、製紙原料のチップへの加工など、竹は様々な面で木材と比べて効率が悪いため、現在でも日本の製紙会社ではほとんど扱われていません。タケノコ農家やチップ工場の協力のもと試行錯誤を重ね、竹の集荷体制を築きあげ、地道に挑戦を続け2013年には日本の竹100%の紙を製造販売する日本で唯一の総合製紙メーカーとなりました。現在、中越パルプ工業は年間約2万トンの竹を紙にしています。

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冒頭でご紹介した竹紙商品は、西村さん考案によるもの。素材メーカーである製紙会社は、注文してくれる企業に原紙を納める会社です。せっかくの竹紙も商品化されなければ注文もなく、誰の目にも触れることがありません。そこで、自ら商品化を図り、まずは竹紙100ノートを制作して都内の大手文房具店で扱ってもらいました。西村さんの竹紙の取り組みは、「エコプロダクツ大賞農林水産大臣賞」、「生物多様性日本アワード優秀賞」など、環境分野で高く評価され数々の受賞しています。
竹に新たな経済的価値が生まれたことにより地域経済にも好影響を与え、民間レベルでの伐採整備が積極的に行われるようになり、放置竹林の整備が進むことで森林や里山とそこに暮らす生物が守られる。厄介者の竹を持続性のある環境貢献を果たす“ソーシャルグッド”な竹紙に生まれ変わらせた西村さんは、まさに“ソーシャルアニキ”。
西村さんは、竹紙の折り紙を使ったソーシャルアクションの発信や、ワークショップなどの竹紙関連の取り組みのほかに、東京・銀座を拠点とした社会派映画の上映会「銀座ソーシャル映画祭」の主催など独自の活動を展開されています。皆さんも、自分からはじめる“ソーシャルグッド”を見つけてみませんか。

中越パルプ工業株式会社 竹紙事業の最新情報はこちらから
竹紙商品はこちらから MEETS TAKEGAMI公式オンラインストア
MEETS TAKEGAMIのメールアドレス info@meets-takegami.jp
銀座ソーシャル映画祭の開催情報はこちらから

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西村修(にしむら おさむ)
総合製紙メーカー・中越パルプ工業株式会社 営業企画部部長。
ごく普通のサラリーマンだったが、1998年より同社で製造されていた日本の竹100%の紙に「竹紙」と名付け、企業ブランディングの核として「竹紙」の取り組みを対外的に広める活動を主導。
「エコプロダクツ大賞 農林水産大臣賞」「生物多様性日本アワード 優秀賞」など、環境分野、社会分野等における数々のアワードを毎年受賞。
現在では、「竹紙」と「社会」の接点を作るソーシャルアクション「MEETS TAKEGAMI」などを展開。
また、2013年から自主的にスタートし、これまで100回以上開催された、国内外の社会派ドキュメンタリー映画の市民上映会「銀座ソーシャル映画祭」や、2018年よりSDGs勉強会「朝活半径3メートルのSDGsアクション」を主宰している。
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