長年、「世界平和を目指しています」と言い続け、時に怪しい人と思われることもしばしばですが、私が思う世界平和は「すべての命が、その命らしく、のびのびと生き活きていることと捉えています。となると、この地球上でもっとも影響力の高い“人”、さらにその集団である“社会”や“組織”のあり方が問われる、だから人財育成も組織変革も止められないのです。
その中、入管法改正やLGBT理解増進法、さらに、日本のジェンダー指数が過去最低、などと、私としてはちょっと萎えてしまいがちなこの頃です。が、もちろん、全く萎えてはおらず、ますます注力を高めています。
ダイバーシティ推進という言葉が一般化して経年を重ねてきました。
グローバルでは、今や「DEIB」へと変容しています。Diversity=多様性、Equity=公平性、Inclusion=包括的、そしてBelonging=帰属。特にBelongingについては、決して、社会の規律に当てはめたり会社の理念や思いをトップダウンしたりするのではなく、すべての人が“自分が属している実感と充実感で満ちている状態”を示します。つまりは、誰ひとり取り残さないことなのです。
ダイバーシティ推進には、女性活躍や男性育休取得、障がい者雇用、LGBTQフレンドリーなど、部分的やともすると表層的なものではなく、より本質的なものが求められているのです。
コロナ渦を鑑みても、生活や働き方、事業のあり方、価値観も様々となり、社会は大きく変容しています。その社会に適応するには、ダイバーシティ=多様性を活かすことの再考が求められるのではないでしょうか。
多様性を活かす、そのスタートには個性を認知し受容するということが欠かせません。在宅時間が増えた生活やリモート会議を取り入れた働き方なども尚のこと、その人それぞれのパーソナリティを認知し受容することが必要です。
パーソナリティとして、もっともわかりやすいのが男性と女性の違いが挙げられます。言葉を変えれば、男性と女性の違いを活かせなければダイバーシティではないと捉えることもできます。そこで間違いたくないのは、男性は男性の領域、女性は女性らしさを発揮する、障がいのある人には障がい者向けの業務、などと限定や線引きをしないことです。
限定や線引きは、ステレオ思考に起因することは多いものです。ステレオ思考とは、例えば「年齢を重ねると頑固になりがち」「Z世代は価値観も次元も違うもの」「男性は論理的」「女性は概ね家事に向いている」などと一般論や全体感で捉え、無意識な決めつけに陥ることで、結果的にパーソナリティとしての強みや能力、特質に気づかず、認知することも受容することも活かすこともできなくなるのです。そしてやがて、一般論や全体感に終始した右へ習えの組織や社会となり、重大な問題を見逃す、貴重な機会を見失う、新しい発想やアイデアが生まれない、と弊害が生じてしまうのです。合わせて、このようなステレオ思考は、過去の価値観や経験則に縛られているものなのです。
皆さんの周りには、男性も女性もいることと思います。その違いを念頭に置くのではなく、個々の持ち味に注目し、その力を引き出したいものです。例えば、男性でも1年を超える育休を通してキャリアアップする人もいますし、入社1年目の女性に一任することでプロジェクトが加速することもありますし、副業があるから生産性の高いタスクとなる人もいます。
その人それぞれのパーソナリティを認知し受容することは、もはや、ダイバーシティ推進の1丁目1番地であり、それができなければ、マイノリティと言われている人たちや何らかの事情や制限を抱えている人たちを、取り残すことにもなりかねません。
今こそ、過去の価値観や経験則に縛られず、部分的や表層的なダイバーシティ推進から、「DEIB」へ。本気本質本物が発揮できる絶好の機会。それを逸することないようにしたいものです。
<プロフィール>
株式会社グロウスカンパニー+代表取締役 山岡仁美
人財育成コンサルタント、組織変革ファシリテーター、SDGs推進サポーター
HR領域にてサステナビリティを中核に30年超、2000社超のキャリア。自身の管理職経験、出産、起業を通して、多様性を活かすのが持ち味。著書・メディア出演多数。